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-- まず、Jun Gray Recordsの発端から伺えますか? 資料には「昨年からKenにレーベル設立を何度も勧められた末に重い腰を上げた」とありますが。

「そうですね。去年の早い段階からそんな話を言われていたんですけど、最初は聞き流していて。何言ってんの?ぐらいな(笑)。やるって決めたのは去年の12月くらい。それまでは、ヤだよとか面倒臭いよとか返してた(笑)」

-- (笑)。KEN BANDの中でも、Junさんにピンポイントで勧められていたんですか?

「それは、結構前から、UNLIMITS良いよっていう話をバンド内でしたり、KEN BANDのオープニングアクトで呼んでいい?って言ったり、そういうのをKenが見てて、ガールズヴォーカルのバンドが好きなんだって知っていたから、俺に言ってたんだと思うんだけど」

-- ガールズヴォーカルのレーベルっていう前提で勧められていたんですか?

「うん、そう言ってた、最初から。そんなに好きなら、レーベルでもやったらいいんじゃない?って。しかも、ピザの中でレーベル内レーベルみたいなことが出来るんだから、やってみたら?っていうのも、最初から。でも、何せノウハウがわかんないし、そんな上手くいくかなあ?って、気乗りしていなかったんだけど、一年くらい前に、やってみんのもいいのかな、って。ピザ側もサポートしてくれるっていうんで」

-- 今まで、レーベルをやりたいと思ったことはあるんですか?

「全くない。ただ、18歳くらいの頃、地元の仙台で初めて音源を作った時は、自分でやるしかなかったけど。レーベル立ち上げる!っていうんじゃなく、その程度で。それ以降バンドをいろいろやってきましたけど、レーベルをやろうと思ったことはなかったですね。そもそも、ガールズヴォーカルのバンドのレーベルなんていっても、特に俺、ガールズヴォーカルのバンドが好きなんてKenに言われるまで意識したことがなかったんですよ」

-- へえー!?

「言われてみて、あ、俺って他の人より聴くなあって。逆に、みんな聴かないんだなって。俺は、パンクとかももちろん好きなんですけど、昔っからノンジャンルで、R&Bまで手を伸ばして聴いていたりするんで。しかもそれが、女性ヴォーカルが多い。渋いところだとロバータ・フラッグとか、チャラいところだとTLCとか」

-- えええ、意外すぎます! ガールズヴォーカルを好きになったルーツって、何かあるんですか? (↗)

Jun Gray 10,000字インタビュー!

「中学生くらいからロックとか聴き始めたんですけど、ちょうどね、日本でランナウェイズが流行ったんですよ。俺よりちょい上の世代が騒いでいた感じだったんですけど、4人とも女の子で、俺もヴィジュアル的にガキながら衝撃を受けたんです。自分もロックを聴き始めて楽器やろうかなって思っていたくらいだったから、女なのにバンドやってる!って。珍しい存在だったし。ただ、インパクトはガツーンって受けたけど、曲にのめり込むほどじゃなかった、当時はね。その1、2年後、パンクとかガンガン聴き始めた頃に、ブロンディが出てきて。もちろんクラッシュやピストルズ、ストラングラーズにもハマるんですけど、でもブロンディもかなり聴いていたから、そのへんがガールズヴォーカルのルーツなのかもしれないです」

-- Junさんって男臭い世界で生きてきたから、そういう音楽を聴いてきたイメージが強いですけど……。 

「もちろん、ゴリゴリなのも好きなんですよ。でも、何なんだろう……女の子のヴォーカルの方が、ジャンルにもよるけど耳触りがいいし、特に最近は、ツアー出て、自分のライヴが終わって、ホテルに帰ってきて聴くのは、そんなゴリゴリの聴かないっすよ(笑)。癒される、っていうのはあるかもしれない」

-- オフにする時はガールズヴォーカル?

「オンでもオフでもゴリゴリなのを好きな南ちゃんみたいな人もいるけど(笑)。俺はね、ライヴ終わった後までうるせえのは聴きたくないなって思う」

-- でも、TLCとかを聴いているバンドマンって、周りにいました?

「これ、載っけないでもいいけど、俺、元COCOBATのRyujiとDESSERTってバンドやってたけど、Ryujiは当時SPEEDにハマってましたね(笑)」

-- えーっ! 

「あいつ、COCOBATがトイズで、レーベルも一緒だったから、それでCDもらっていたのかもしれないけど、その流れまで俺までサンプルをもらって。二人で、いいねえ結構、なんて言ってました(笑)」

-- 意外とみなさん柔軟な耳を持っているんですね。

「そういう人もいると思うよ。Ryujiは特にそうだね、俺に近いっていうか。ガールズヴォーカル、昔から好きだった。普段はスラッシュメタルとか聴く癖に、それとは違う耳を持っていて、パッツィ・ケンジットとか、トランスヴィジョン・ヴァンプとか、イギリス系が多いけど、新譜出たね!って二人で聴いたりしていたから」

-- KEN BAND内では、あのバンドがいいとか、そういう話もするんですか?

「するけど、好きなジャンルが、共通しているところもあるけど、違っているところも多いんで。例えばモーターヘッド新譜出たよとは話すけど、俺が最近好きな洋楽のガールズヴォーカルのバンドを言ったところで、誰も知らないと思うし」

-- じゃあ、ツアーのゲストバンドの候補を出し合う時は、赤裸々に趣味が出るんじゃないですか?

「そうだね。UNLIMITSを二回くらいツアーに呼んだんだけど、対バンの候補を挙げている時に、あっち方面に行くならスコットは、とか言うと『またギャルバン!?』って言われた(笑)」

-- (笑)。でも、そんなやり取りを経て、このコンピが生まれていったわけで。 (↗)

「そう。で、レーベルをやるよってなって、じゃあどういう形にしよっかってなった時に、ピザと話を進めていったんですけど、最初はガールズヴォーカルのバンドを中心にやっていくんだから、わかりやすくコンピを出すのがレーベルの色が出しやすいんじゃないの?っていう話になったんですよね」

-- 収録バンドはスムーズに決まりましたか?

「まず、対バンとかやってた関係で、アンリミ推しっていうところがあって、彼女たちには一番最初に声を掛けたんですね。奴らも、面白そうだからやりたいって言ってくれて、そこから話が進んでいったっていうか。それで、アンリミの連中とも話して、コンピを作る上で、一緒にやりたいバンドある?って聞いて、そこで出てきたバンドもあったし、あとは俺が前から気になっていたバンドを入れたりとか。で……Kencoあるじゃないですか、あれに至っては横山健の悪ふざけっていうか。俺とピザのアベで話をした時に、コンピを作りましょう、OKってなって、Kenにコンピでいくことになったからって報告したら、『うちらも入りたいな』って……ちょっと待て、おいおいおい! ガールズヴォーカルのバンドのコンピを作るんだよ!って(笑)」

-- 最初にガールズヴォーカルのレーベルを提案した張本人なのに(笑)。

「そうそう(笑)。だから、違うんじゃねえの?って言ったら、女装したらよくない?って言われて、そっからこういう話になったんですよ」

-- 言い出しっぺ、どっちなのかなって思ったんですよ。Junさんがレーベルオーナーとして、第一弾には入りたいと思ったのか、それとも……。

「言い出しっぺ、俺じゃないです!」

-- (笑)。じゃあ、ここからは、収録バンドを一バンドづつ、出会いや収録曲も含めて語っていって頂きましょうか。まずは、先ほどから名前が挙がっているUNLIMITS。

「UNLIMITSの出会いはね、KEN BANDに入った直後だから、4年前くらいですけど、俺、MINOR LEAGUEと昔から仲良くて、ライヴを見に行った時に、MINOR LEAGUEとUNLIMITSも仲良いんで、UNLIMITSの大月が遊びに来ていて、紹介されて、その時に音源をもらったりしたんです。その場ではたいして、女の子ヴォーカルでやってるんです、みたいな話もしてないと思うんですよね。聴いて下さいぐらいに言われて、オッケーなんて聴いてみたら、かっけえじゃん!って。それで、連絡先も交換していたから、ライヴを見に行ったり、そういう感じで仲良くなっていって、うちらのオープニングアクトをやってもらいたいって話になって。それ以外でもフェスで一緒になったりしているんですけど。そんな感じで、今回のバンド……Kenco抜かして(笑)5バンドの中では、一番繋がりが深かったっていう」

-- Junさんが感じるUNLIMITSの魅力とは?

「やっぱメロディ。2ビートでメロディックパンクっぽいことをやっているんですけど、メロディが昭和歌謡みたいな。あいつらの売りなんだろうけど、そういうところが、俺みたいな昭和の人にはガツンと入ってくるっていう(笑)。どっか昔の『ザ・ベストテン』で聴いたようなメロディが、2ビートにのっかってる、みたいな。そういうところが魅力っていうか」

-- Junさんは歌謡的なメロディも好きなんですか?

「そうだね。そういうところを通ってきているし、KEN YOKOYAMAとかもそうなんですけど、英語詞でも、Kenが作るメロディは洋楽メロディックパンクっぽくないと思うんだよね。曲によっては、どっかでちょっとしたメロが昭和臭かったり。そういうのって、俺は面白いと思っていて。やっぱ、日本人がやってるんだから、それくらいの方がカッコいいっていうか」 (↗)

-- 収録曲に関して、リクエストはしましたか?

「しました、アンリミに関しては。東京のバンドだし、最初から決まっていたんで、何回か話す機会があって、リクエストをして、彼らもそれに応えるような感じで作ってくれたんだけど、俺が言ったような楽曲と違ったものも作ってきたりして。俺はそれを聴いて、こっちもいいよね?どうしよっかなってなったり」

-- 何曲か候補があったんですね?

「アンリミはそうですね」

-- ちなみに、どんなリクエストをしたんですか?

「でも、そんな難しいことは言ってない。さっき言ったような、2ビートに歌謡曲チックなメロディがのってる、所謂アンリミらしい、昔っからお前らが得意としている感じが欲しいっていう。実際、そういう曲になったと思うんですけど。アンリミを初めて聴く人でも、アンリミはこういうバンドなんだよってわかりやすい方がいいかなって」

-- 続いてはtricot。これは、アンリミのメンバーから挙がってきたそうですね。

「そう。最近キてるから知っていたけど、名前くらいしか知らなくて。でも、UNLIMITSの大月に、一緒にやりたいバンドいる?って聞いたら、一番最初に出てきた名前がtricotで。それをKenに話したら、前に京都か大阪で対話集会っていうイベントに一人で出た時に、会場にtricotが来ていて、知り合っていたみたいで。京都のKEN YOKOYAMAのライヴにも遊びにきてくれていたんですよ。俺、すっかりそれを忘れちゃっていたんですけど、ああ、あのバンドか!って。そういうのもあって、やってくれたっていうか。俺が直接初めて話したのは、今年の夏の山口でフェスの時で。既にコンピは決まっていたから、ありがとうねっていう感じだったんですけど」

-- ピザ・オブ・デスっていうレーベルとして見ると、異色なバンドですよね。

「そうだね、一番異色かもしれないね。でも、コンピ作るってなった時に、あまりにもメロディックパンクみたいなバンドばっかり集まるのもなんだかなあって思っていたので、ちょうど良かった。こういうバンドがいてくれると、広がるなって。だから大月に感謝(笑)」

-- これぞレーベル内レーベルの強みですよね。Junさんのルーツの幅広さが表れて、Junさんがオーナーだからこそこうなるんだ、って感じられるというか。

「そうそう。ガールズヴォーカルを中心にやっていくんですけど、ピザっぽいバンドじゃなきゃいけないとは思っていないんで。極端に言ったら、ミシェル・ブランチとかも好きなんで、ギター弾き語りでもめっちゃカッコいいと思ったらリリースしたいし」

-- 音楽的には、Junさんから見てtricotの魅力ってどういうところにあると思います?

「なるほどね、って思った。ヒネくれポップっていうか。だって、この曲名、冬に出すのに『スーパーサマー』ですよ(笑)」

-- 確かに(笑)。

「そういうところが彼らの魅力なんだと思いますね。直球勝負じゃないっていう……でも、思い出した。フェスで会って話していたら、彼女たちなりにピザのレーベルのコンピっていうことで、直球勝負をしたんですって。確かに、他の曲を聴くと、凄いのいっぱいあるから。意外と素直な曲なのかな」

-- そうですね。今作によって、彼らの素直な面が引き出されたっていう意味では、ファンも嬉しいかもしれない。そして、SCOTTLAND GIRL。資料によると、出会いはat Anytimeのライヴを見に行った時に、対バンで出ていたことがキッカケだったそうですね。

「そうそうそう。最初の出会いは、俺、八王子に住んでるんですけど、アトエニが八王子でライヴをやるので、Junさん見に来て下さいって言われて、行ったら、それがスコットのレコ発だったんですよ。それで最後のスコットまで見ていたら、アトエニ見に来たんだけど、もっといいもん見ちゃったな、みたいな(笑)」

-- それ、アトエニ的には複雑じゃないですか(笑)。

「いいのいいの(笑)。それで紹介されて、音源をもらって、家で聴いたら、やっぱこれいいわって思って。2年くらい前だから、東京でも殆ど知名度がなかったし、彼女たちはまだ若いんですけど、演奏力はその時からあって。当時からドラムは変わったんですけど、最近さらに演奏面や曲のクオリティが一皮剥けて。新しい音源もレベルアップしてるなって思っていたんで、声を掛けたら、ぜひやりたいです!ってなって。で、これに持って来てくれた曲が、さらに俺的にはランクアップしてるんじゃないかなって。これからも期待だなって思っています」

-- Junさんは、若手バンドのライヴにも結構足を運ぶんですね。

「結構でもないですけど……誘われて行ったらなるべくいろんなバンドを見ようと思うし、あと自分が出るフェスでも、出る時間は後ろの方でも、最初から楽しむんですよね」

-- 会場に着いて、自分たちのライヴをやって、終わり、みたいな感じじゃないんですね。 (↗)

「そういう方が殆どだと思いますけどね。朝行ったって誰もいないもん(笑)。京都大作戦の時だって、俺、物販のスタッフと一緒に行ったら、フェスのスタートが11時なのに、9時半くらいに着いて、TAKUMA(10-FEET)に『何やってるんすか!?』って言われたから(笑)。流石に早過ぎてさ。楽屋で寝とくわって(笑)」

-- (笑)。でも、そういう好奇心を持ってる方って、レーベルオーナーに向いてるんじゃないですか?

「好奇心はありますよね。今となっては、やるって決まったから、俺が知らない原石を見付けたい気持ちはありますね」

-- 一話をスコットに戻すと、コンピの収録曲『Don’t be afraid』を聴いていても、Junさんのランクアップっていう言葉は頷けるというか。一曲にいろんな要素を詰め込んでいますよね。

「そう。ジャンルで言うとうちらと同じメロディックパンクなのかもしれないけれど、Kenとかでも、なかなかこういう構成は出てこないだろうな。最近の若手のバンドの音源を聴いて、へえー!って思うことがあって。うちら世代ってね、さっき言ったように昭和歌謡を通ってるからか、一番のAメロ、Bメロ、サビ、二番、Aメロ、Bメロ、サビ、何か間奏があって、Bメロ、サビっていう構成が多かったりするんですよ。でも、若手バンドって、そういうのからガラッと違う構成できたりするんですよね。この曲も、所謂Aメロは一回しか出てこない。そういう感性って、うちらくらいの年齢のミュージシャンにはないっていうか」

-- こうなると、メロディックパンクって一口には言えないですよね。どんどん細分化されてきていることがわかる。

「そうそう」

-- また、自分たちの武器である男女ヴォーカルの掛け合いも、めいっぱい生かされているし。

「そうだね……そうだ、俺、一応リクエストしてね。スコットとフォゲミって、どっちかっていうと、完全にガールズヴォーカルのバンドではないじゃないですか。楽曲によっては男がメインで歌っているし。だから、どっちのバンドにも、今回ガールズヴォーカルっていうコンセプトだから、そのへん考えてねって言ったんです。でも、スコットの曲は出だしがGORIからだったんですよ(笑)。何で!? まあ、楽曲いいからいいか、ってなりましたけど(笑)。フォゲミはちゃんと考慮してくれて、智恵ちゃん中心の楽曲でしたからね。スコットは、やってくれたなって感じです(笑)」

-- 確かに出だしからこの声だと、ガールズヴォーカルっていう頭で聴いていると、びっくりしますよね(笑)。そして、収録バンドの中では唯一全員女の子バンドであるFLiPについて。

「FLiPはね、デビューして間もなかったかな、長崎のスカイジャンボリーで、フェスの中でもオープニングアクトをやっていて、さっき言ったように俺はフェスに朝から行っているから、FLiPも見ていて。お、ギャルバンだ、しかも上手い!って。そん時はね、打ち上げもあって、仲良くはなったんですけど、うちらが、っていうかうちらのスタッフが騒ぎ過ぎて引かれたと思う(苦笑)。だって、FLiPに酒掛けてたからね!」

-- 若い女の子にそんなことしちゃダメです(笑)。

「でも、その後に、RUSH BALLで一緒になって、その時も打ち上げでいろいろ喋ってて。BRAHMANのRONZIとかもいたんだけど、何せ、全員女だから茶化すじゃないですか、飲んでるしね。そうすると『あたしたちそんなんじゃないですから!』って、硬派で」 (↗)

-- 音楽のイメージのまま、先輩にもズバンとした対応ですね。

「うん。『私たちアイドルじゃないから!』って。そこが面白いと思って。音源を聴いてもシブいことやってたりして、所謂売れ線を狙っていく、何とかなんとかとか、何とかなんとかみたいなギャルバンとは違うんだな、って」

-- 何とかなんとかの実名が聞きたいところですけど(笑)。ガールズヴォーカルでも、Junさんの中で良い/悪いの線引きがあるんですね。

「ありますよ。それは、俺個人の偏見もあるのかもしれないけど。洋楽だと、こないだ出たアブリル・ラヴィーンとかも聴きましたけど、全然ピンとこないんですよね。最初はパンクっぽい売り出しだったじゃないですか。そん時からあんま好きじゃなくて。パンクなのかアイドルなのかわかんない感じがして、それだったらイギリスのリリー・アレンみたいに、音はパンクじゃないけど言ってることややってることがパンクな人の方がカッコよく思えるんですよね」

-- 売れ線を狙っていると感じちゃうとダメとか?

「でも、売れ線を狙っているものが全部嫌いかっていうと、そこは微妙で、さっきミシェル・ブランチを好きって言ったけど、ああいう路線をさらに売れ線にしたようなテイラー・スウィフトもいいなって思うんです。可愛いなあって思うし(笑)。そういう勝手な俺の線引き」

-- なるほどね。そういう中でFLiPは琴線に触れたんですね。

「こないだライヴに行ったんですよ、11月のSHIBUYA AX。その時も、演奏上手いなあ!って感心しちゃった。女の子だけで、よくここまでのライヴをやれるなあって。単純に演奏力なら、KEN BAND敵いません(苦笑)」

-- ええええ!?(笑)。

「うん、思ったもん。家帰って練習した方がいいかなって。女の子4人だから、男のバンドに負けてらんねえよって思ってると思うんですよ。相当練習もしているだろうし。KEN BANDなんてグダグダな時もあるし、そういうのに比べるとすげぇなって」

-- そういう負けてらんねえよ感って、コンピだと光るところもありますよね。

「まあ、今回……Kencoはおまけですけど、他のバンドにとって良かったなあって思うのは、どのバンドもガチンコ勝負っていうか、絶対に負けないぞっていう曲を持ってきたと思うんですよ」

-- 確かに。そして、先ほども名前が出てきたFOUR GET ME A NOTSですが。

「ライヴこそ見たこそがなかったんですけど、昔っからYOUTUBEとかで聴いて気になっていて、いいなあって思う曲もあって、コンピって考えた時に、最初の方から入れたいなあって思っていたバンドです。さっき言ったように、ガールズヴォーカルのコンピなんで、智恵ちゃん推しの方向で曲を作って欲しいって言って」

-- 今回は、っていうところですよね。実際はドラムの阿部くんも歌いますし。

「そう、全員歌えるから凄いんですよね、このバンド」

-- 編成が近いから、スコットと比較して楽しむこともできますよね。 (↗)

「そうそうそう。フォゲミがいる上でのスコットっていうか。近い路線ではあるから、コンピに入った時にバランスがいいなって。そことは全然違うところにいるtricotとFLiPがいて、また何処にも属してないアンリミもいて」

-- 共通点は一点だけ、ガールズヴォーカルっていうところのみですもんね。

「そう。あと、俺が思うのは、5バンドを全部知っている人って、そんなにいないと思うんですよね。アンリミとtricotは知ってるけど、他は聴いたことないとか。そういう人が聴いてくれて、結構このバンドいいじゃんって思ってくれるんじゃないかなって。そういう相乗効果を期待しているところもあります」

-- そして、おまけとは言え、Kencoについても伺っておきたいのですが……。

「悪ふざけです(笑)」

-- でも、Kencoが参加するって聞いた時に、ガールズバンドのカヴァーをするとか、歌声に女性っぽいエフェクトを掛けるとか、そういう予想をしていたんですけど、こうきたか!っていう意外な切り口で(笑)。

「んー、簡単に言えばジューダス(・プリースト)のカヴァーなんですけど。単純にその曲をKenが好きで、カヴァーしたかったのもあって。で、まあ、Kenが、このコンピに入るためには女装するしかないって最初から言っていたんですけど、イコール、ゲイっていうか……そこでジューダスにも繋がってるんですけど、これ、わかる人にしかわかんないよね(苦笑)。あまりに詳しく説明してもね、うちら、ジューダスをディスってるつもりもないし! どっちかっていうとリスペクトだから」

-- この曲がジューダスの曲ってわかんない人も、ロブ・ハルフォードがそういう人だって知らない人もいるでしょうしね。でも、全部を種明かしするのもつまんない気もするし。

「そうそう。若い子なんか、ちょっと変わった感じの曲できたね、としか思わないかもしれないし。わかる人だけわかればいいかな。エピソードとしては、女装の衣装が自前っていうことくらいですかね(笑)」

-- えええ!!(笑)。

「要は、みんな奥さんとかいるしょ。それで、最初ね、リハの合間に撮ればいいじゃないって、スタジオの中で撮っていたんですよ。でも、Kenはその格好でロビーでうろうろしだして、ロビーで撮ろうってなって。イヤだなあ~って思ったんだけど、やってみたら面白くて(笑)。そうしたら今度はカメラマンが、外で撮りません?って。山手通りだし、絶対にヤダ!って言っていたんだけど、KENが出ちゃって、えええ!?って出ていったら、やっぱり面白くなっちゃって、外で撮ったのがコレ(笑)」

-- 一歩間違えれば危ないですよ(笑)。

「確かに通行人は、何この人たち!?って(笑)」

-- おまけっていうわりには、エピソードがたくさんあるじゃないですか!

「エピソードはたくさんあるんですけど、僕はレーベルオーナーとして、ここに注目されても困るんですよ!(笑)。他の5バンドに注目してもらわないと」

-- 確かに(笑)。

「あくまで、俺が立ち上げたJun Gray Recordsに、横山健が悪ふざけではあるけれど、花を添えてくれたんだなっていう」

-- そうですね。そして、ツアーには、収録バンド全てが参加するんですよね。

「Kenco以外ですね」

-- この格好はこの写真だけですか?

「……でしょうね。うちら、アルパカになったり、いろいろ大変だからね、もういいでしょう(笑)」

-- ちょっと残念ですが(笑)。この5バンドでも、バンド同士繋がりがないバンドもいるでしょうし、新鮮な組み合わせですよね。

「そうそう。そういうのもあって、こないだFLiPの連中と話した時も、ライヴを楽しみにしていました」

-- そして、Jun Gray Recordsのこれからですけど、良いと思ったらいろいろリリースしていきたいですか?

「そうですね。だからデモ音源を常に募集していきたいです。ガールズヴォーカルのバンドって、少なくはないのかもしれないけど、男がヴォーカルやってるバンドに比べたら少ないと思うんで、そこを俺がね、いろんなバンドを見に行くからって、なかなか見付けるのも大変なんで、ぜひって思う人は、音とか送って欲しい」

-- メロディックに限らず、例えば弾き語りとかでも。 (↗)

「そうですね。これは日本のミシェル・ブランチじゃん!って思ったら出すかもしれないし」

-- これは日本のTLCじゃん!って思ったら出しますか?

「ふははははは! そっち考えてなかった! ダンスのビデオとか送られてきたらどうしよう。でも見たいね」

-- ピザ・オブ・デスとしても画期的だと思います(笑)。Kenさんに背中を押されたとはいえ、レーベルを楽しんでいるんじゃないですか?

「いやあ、まだ実感がないですよ。レーベルやることに関してはど素人なので。コンピが発売されたら、そういう気分にもなってくるかも」

-- でも、Kenさん以上にいろんなバンドやレーベルを渡り歩いているじゃないですか。バンドマンの立場はよくわかりますもんね。

「ああ、それはあるかも。この後も単独でリリースしていくと思うけど、そのバンドがどんな形でやるのがカッコいいのかとか、一緒に考えてやっていきたいですよね」

INTERVIEW BY 高橋 美穂