The Dahlia 1st Full Album「BUZZY KIDS」

発売日: 2024年9月4日(水) . 配信: 9月4日(水) 0:00~ / Code: PZCJ-12 / Price: 2,750円(税込)

TRACK

Buy

  • amazon
  • タワーレコード
  • tsutaya
  • disk union
  • HMV
  • 楽天ブックス

[BUZZY KIDS] TOUR

(月祝)心斎橋 pangea

(土)岡山 ブルーブルース

(日)広島 ALMIGHTY

(土)名古屋 HUCK FINN

(土)益田 ALIVE

(日)出雲 APOLLO

(木)千葉 LOOK

(金)下北沢 LIVE HAUSE

(日)仙台 FLYING SON

(金)静岡 umber

(日)岐阜 ANTS

(月祝)四日市 CLUB CHAOS

(土)大分 SPOT

(日)松山 w u studio

(金)心斎橋 BRONZE

(土)京都 POP!! PIZZA

(土)広島コンクエスト

(日)岡山ペパーランド

(土)横浜 BUZZ FRONT

(日)中野 moonstep

(日)心斎橋 火影

メール予約はこちら »

Official Interview!!

Interview Vol.01

―― 結成から約3年、これまで自主制作でEPやシングルのリリース、自主企画の開催をしてきましたが、遂に初めてのフルアルバム『BUZZY KIDS』が完成し、Jun Gray Recordからリリースされることになりました。

藤本梨佐子(Vo) やっとフルアルバムが出せることになってシンプルに嬉しいっていうのと、大阪の狭いコミュニティを超えて、自力ではどうしても届かなかったところに届くことでまた新しい出会いもあるだろうし。今までとは違う化学反応が起こるんじゃないか、という楽しみな気持ちがありますね。

船越颯斗(G) 個人的にメチャメチャ好きなレーベルから出せることもそうですし、このフルアルバムを出すことでツアーに行けることも嬉しいです。

クボ(Ba) 僕は逆に不安やプレッシャーもあって(笑)。

―― そりゃ、そうですよね(笑)。

船越 今の発言は完全にクボくんらしいですね(笑)。

―― あぁ、突っ走る側と引き止める側で分けたとき、クボさんは引き止める側みたいな。

クボ そういう感じですね。反響がどうなのか、とか、ツアーもそうですし、そっちの方が大きいかもしれないです。

―― という3人に対して、YU-SHIさんは?

YU-SHI(Dr) 結構ワクワクしてて。自分の技術面に関しては結構プレッシャーもあるんですけど。

―― 最近、フルアルバムという形にこだわらないバンドも増えているじゃないですか。そういったところはどうだったんですか?

藤本 バンドとして、というか、メンバーそれぞれジャンルとしては違うんですけど、いわゆる古い時代、自分たちがリアルタイムで経験してない音楽を聴いてきたところがあって。やっぱり、そういう時代の人たちってフルアルバムを作ることに力を入れてたじゃないですか。だから、ひとつ憧れに近いというか。今、配信で1曲ずつでも発表できるし、そこにこだわる必要はないのかもしれないけど、やっぱりバンドをやってるからには作ってみたい、という気持ちがありました。

クボ 今までEPを2枚、シングル1枚を自分たちで作って。やっぱ、また次に同じようなサイズを出すのは芸がないと思ってたし。「どうせなら、フルアルバムを作れたらいいよね」っていう話もバンド内でしていたんです。

―― 今回、Jun Gray Recordsからのリリースになりましたけど、どこでJunさんとはつながったんですか?

藤本 (船越)颯斗じゃない?

船越 え〜と、BURLのライヴを観に行ったとき、そこにPIZZAのスタッフの方がいて、「ヴォーカルが女の子なんで、よかったらJunさんに」ってCDを渡したんです。そうしたら、それを聴いたJunさんがライヴを観に来てくれて。

―― それまで、リリースに向けていろんな人にCDを渡したりもしてたり?

船越 いや、それ以外はホンマにやったことがないですね。それこそ、いちばん最初にThe Dahliaを組んだときぐらい、(藤本)梨佐子も憶えてるかわかんないぐらいなんですけど、「女の子ヴォーカルなら、Jun Gray Recordsに入りたくない?」って話をしてて。

藤本 PIZZA OF DEATHの音楽にいちばん影響を受けてるのは颯斗なんですよ。

―― じゃあ、結成当初にポロッと話してたことが現実になった、みたいな。

藤本 タイミングも凄く良かったなと思ってます。

―― バンドの流れをまず振り返りたいんですけど、2021年に結成ということですよね。

藤本 私がバンドをやりたいなと思って、人を集めた感じですね。

―― みなさんのつながりは?

藤本 みんな、バラバラです。クボだけ高校の同級生なんですけど、それ以外はたまたま巡り合ったというか、YU-SHIも颯斗も私がグイッと入れた感じだと思います。

―― 同級生ということで、クボさんとは仲が良かったような。

クボ いや……そんなに(笑)。

―― 同時に藤本さんもめっちゃ首を横に振ってて(笑)。

藤本 ハハハハ(笑)。

クボ 高校時代、2、3回ぐらい喋ったのは憶えてるけど。

藤本 同じ軽音部だったんですけど、部員が100人ぐらいおって。やることがない子らが入る、緩い部活だったし、クボと関わることもあんまりなかったんです。高校を出て、私がバンドをやりたいなと思ったとき、クボがベースを続けてるというのを耳にして、どういう感じが聞いてみたら「大学で音楽をやってるけど、コロナ禍で練習や発表もできなくて暇だ」ということだったんで、「だったら、こっちのバンドを手伝ってや」みたいな。そこからズルズルと引きずり込んだ感じですね(笑)。

―― じゃあ、最初は軽いノリというか。

クボ そうでしたね。だから、月に1回ぐらいライヴするのかなと思ってたけど、実際は10回ぐらいライヴしてて。

一同 ハハハハ(笑)。

―― 話が違うぞ、と(笑)。船越さんやYU-SHIさんとはどういう接点が?

藤本 YU-SHIとは高校のときにライヴハウスへ遊びに行ってたときに知り合って。そのときからドラムをやってて、「高校卒業しても、何するかわからへんな」って言ってたんですき家で誘いました(笑)。で、コロナ禍だったんで直に人と会うことがあんまりできないし、数撃ちゃ当たるやろと思ってメンバー募集みたいなのをしたんですよ。そのとき、颯斗が「高校辞めたてなんですよね(笑)」みたいなことを言ってたんで誘ってみました。

―― 藤本さんがひとりずつハンティングしていったみたいな流れですけど(笑)、やりたい音楽みたいなモノもあったんですか?

藤本 今よりももっとパンクロックみたいなことが好きで。70年代や80年代のカルチャーも好きだったし、ああいう刺々しいのを今の時代に落とし込んで、みたいなことは考えてましたね。ただ、もうちょっとボンヤリとはしてたと思います。

―― The Dahliaって20歳過ぎぐらいのバンドなのに、往年のパンクロックやロックンロールに敬意を払ったサウンド感で、RamonesやThe Clashの影響も感じることに驚きがあるんです。どうしてそこに行き着いたんだろう、って。

藤本 正直、私もそこまでマニアとかじゃないし、たぶん4人それぞれパンクの捉え方も違うと思うし。RamonesやThe Clashとか、こんなん好きや、ぐらいの感じというか。

―― みんなバラバラみたいなお話もしてましたけど、藤本さん自身のルーツミュージックはパンクロックになるんですか?

藤本 ホントにいちばん最初は中学校のときにいわゆる邦ロックみたいなのが学校で流行ってて、そこでバンドってモノを知ったんです。演奏してる人と歌う人でひとつのアーティストなんや、みたいな(笑)。そこで名前を聞いたことがあったTHE BLUE HEARTSや銀杏BOYZとかが発信してた影響を受けたモノというところで、もっと昔からロックンロールやパンクロックがあったことを知り、YouTubeとかで当時の映像を観て、カッコいいなって思ったんですよね。

―― それが何歳ぐらいのときでした?

藤本 中学3年とか高1年ぐらいかな。でも、そのときはそこまでハマらず、歴史として知ったみたいな。後々、18歳とか19歳になってジワジワと効いてきたんです。「むっちゃカッコよかったんちゃう?」みたいな。リアルタイムじゃないので美化してるだけかもしれないんですけど、当時の空気感、若者が調子に乗ってええな、みたいなところもあったし(笑)。

―― 船越さんはいかがですか?

船越 USパンクが大好きで、西海岸とかも好きですね。具体的に言うとRancidとかNOFXですね、いちばん影響を受けてるのは。ただ、The Clashとか、そこらへんも好きだったりして。古い音楽が好きというか、個性がバラバラな音楽が好きなんですよ。だから、ウチらの曲的にも1曲1曲、そういうところを出そうかな、って。

―― たしかにThe Dahliaの曲ってバラバラですよね。

船越 そうなんですよ、統一性がゼロなんですよ(笑)。

一同 ハハハハ(笑)。

―― 後でじっくり伺いますけど、オールドスクール寄りなパンクロックチューンが軸にあるけど、ミドルテンポもあるし、スカもあるし。クボさんのルーツというと?

クボ ポストパンクが凄く好きで、バンドでいうと、Joy DivisionやGang of Fourですかね。

―― そして、YU-SHIさんはどのあたりになります?

YU-SHI 僕はそういうのが特になくて。梨佐子、颯斗やクボくんが聴いてる音楽を教えてもらって、そっから自分がカッコいいなと思ったのを聴いたりしてますね。

―― そもそもドラムを始めるキッカケになったようなバンドもいない?

YU-SHI いないんですよ。ちょっとやってみようかな、ってぐらいでやったのがドラムだったし。

―― 教えてもらって、自分的にハマった音楽は何かありましたか?

YU-SHI よく聴いたのはThe Suicide Machinesとか、クボくんから教えてもらったLed Zeppelinも結構聴いてますね。

―― みなさん、結構古いアーティストを挙げてますけど、最近のトレンドは興味ないんですか?

船越 ないことはないんですけど、何かね、テンションがアガらない感じなんですよ。

―― 藤本さん、YOASOBIとか興味ないですか?

藤本 いや、めっちゃいいですやん、YOASOBI。それこそ、ボンヤリとああいうカルチャーが好きでバンドを始めたから、最初のころは「古いモノは素晴らしい。今やってるモノは何かの受け売り」みたく思ってましたけど、ちゃんと音楽をしていろんなモノを聴いたら全部楽しいですし。ただ、自分の背景にあるのは最初に触れた音楽なのかな、って。

―― そうなると、King Gnuも素晴らしい?

藤本 King Gnu、めっちゃ好きやもんな、颯斗。

船越 マジで好きで、ホンマに。コピーしてましたから(笑)。

―― また、The Dahliaってめちゃめちゃライヴやってますね。今どきめずらしいというか、最近は効率よくやるのがいいっていう風潮もあって。曲をMVを作って、SNSで拡散して、そこからライヴをちょいちょいやりだす、みたいな。でも、クボさんがいきなり月に10本ぐらいライヴがあった、っていう話みたく、泥臭い活動をしてるな、と。

藤本 いや……これが泥臭いっていう意識もなくて。

船越 あんまり考えがなかっただけですね(笑)。

クボ たしかに「何か疲れるな」とは思ってたけど(笑)。

―― ハハハハ(笑)。そういった活動の中、手応えがあったり、意識が切り替わるような出来事はありましたか?

藤本 常に満たされてる感じはないんですけど……そういったところでは日々のライヴやと思います。曲をスタジオで仕上げてもライヴでやって満足いくモノかどうか、って判断基準にもなるし。今日はおもろかったな、っていうときは凄く達成感もありますね。だから、たくさんライヴをやってるんだと思います。

船越 それこそ、初めて自分たちで企画をやったとき、お客さんは50人ぐらいやったんですけど、「自分たちの力でライヴハウスまで足を運んでもらうことができるんや」って。その日のライヴは初めてモッシュやダイブが起こったりもして。そこにあんまり重きを置いてるわけじゃないし、好きなように観てくれればいいんですけど、お客さんの反応が目に見えてしっかりあったから、それも嬉しかったですね。

―― 今、50人ぐらいって言いましたけど、何事でも人をそれだけ集めるのって普通に考えてめちゃめちゃたいへんですからね。

船越 そうなんですよ。だから、めちゃくちゃ嬉しくて。

―― 他に印象的なことはありましたか?

クボ 現在、進行中ではあるんですけど、毎月、堺のTHE PERRYってバンドと月に1回、堺FANDANGOで企画を13ヶ月連続でやることになってて。

―― えっ、13ヶ月!?

クボ 気づいたら13ヶ月連続になってたんですけど(笑)、それが毎月の楽しみにもなってて。大阪の若いバンド中心で遊び場みたいなモノが作れてるんですよ。まだまだ大阪にはカッコいいバンドもおるし、そういう人らで波を作りたいというのもあるんです。今、5ヶ月目ぐらいなんですけど、だんだんと形になってきてるし、これがしたかったことかもな、って感じたりもしてますね。

―― ムーブメントって言ったら大げさかもしれませんが、そういう空気を作っていけることになりますね。

クボ 大阪の若いバンド、ホンマにやれんねん、っていうのを見せていければ、と。

―― こうやって話を聞いていくと、やっぱりライヴの存在が大きいんですね。YU-SHIさんも同じく?

YU-SHI そうですね。それこそ、東京とかでライヴするとき、大阪で観に来てくれる人らがライヴ中に目に入ったりすることがあって。そういうときはやりがいを感じます。ホンマにありがたいし、嬉しいし。

―― ちなみに、みなさんってキャラクターはバラバラですけど、共通の話題で盛り上がったりすることもあるんですか?

クボ 何やろな?

船越 何を喋ってるっけ、いつも。

YU-SHI どんな話してたっけ?

藤本 いや、めっちゃ喋るんですよ。でも、内容はいつもあんまりなくて(笑)。ウチら、照れちゃって、熱い話ができないんですよね。

―― 曲作りでぶつかって、声を荒げるようなこともなく?

藤本 あんまりないです。ただ、最近はようやくちょっとできてきたというか。思ってることを言葉にするのがみんな苦手なんですけど。

―― だから、バンドをやってるんだ、っていうところもありますよね、きっと。

藤本 それはホントにそうですね……でも、4人とも?とは思いますけど(笑)。

interview by ヤコウリュウジ
Vol.02へ続く...

Interview Vol.02

―― では、フルアルバム『BUZZY KIDS』の手応えを教えていただけますか?

藤本梨佐子(Vo) 全14曲でカバーもあったりするんですけど、結成してからの3年間、今までのベスト盤みたいな感じですね。同時期に作った曲じゃないので、歌詞を書いたり骨組みを作る身としては「いろいろやって、いろいろ考えて、情緒不安やな」と思ったりするんですけど(笑)、それが面白いところなんじゃないかな、と思ってます。

クボ メンバーそれぞれ好きな音楽も違うし、性格もバラバラなのが、何とかひとつの形としてまとまったというか。「この4人の作品はこうなるよね」というのができたんじゃないかと思います。

―― これを聴いてもらえればThe Dahliaの枠組みがわかるような。

クボ(Ba) そうなってますね。だから、絶対に全曲通して聴いて欲しいです。

YU-SHI(Dr) 今まで出したEPやシングルよりも確実にいいモノになってると感じてますね。

船越颯斗(G) 1曲1曲が個性バラバラやし。それこそ、ハードコア、ゆったりしたジャズっぽいのも入ってたり。それをウチらのやり方で収められたかな、と。

―― 様々なパターンの曲があって飽きない作りになってると感じたんですけど、The Dahliaはいろんなことをやりたいバンドみたいな?

船越 そうですね。幅広い曲をやりたくて。僕がギターでこういうのを弾きたい、っていうのをバンドに持ち込んでたりもするんで。パンクロックだけじゃない、っていうのがありますね。

クボ せっかくバラバラな4人が集まったんだから、そういうバラバラな曲がいっぱいあったほうが面白いよね、っていう。意識して妙なコンセプトを掲げて作るよりも、このままを出すのがいいんじゃないかなと思ってたんで。

―― カバーも入れて全14曲ですけど、まっさらな新曲と定番曲に分けると、どういうバランスになります?

藤本 えっと、新曲は4、5曲かな。ただ、ライヴでやっちゃったりはしてるんですけど。

クボ レコーディングしてない曲を数えると……

船越 半々ぐらいじゃない?

藤本 あっ、半々ぐらいか。だから、そのバランス的にもめちゃいい感じやなと思いました。

―― 定番曲をピックアップしたとき、これは外せないとすぐに決まったのは?

船越 「THUNDER」ですかね。

藤本 そうっすね。いちばん最初に作った曲で、わりとみんなもいいねって言ってくれる感じの曲だし。

―― 今のThe Dahliaにとって代表曲のひとつでもありますよね。直球なパンクロックチューンで、70年代や80年代の匂いもするけど、どこか00年代の青春パンクの色も感じます。

藤本 この曲、高校生ぐらいのときに私がギター1本でザーッと作った曲なんです。そのころはそういう音楽も聴いてたので、そこがあからさまに出たのかな、って感じです。

―― The Dahliaの曲って、藤本さんと船越さん、それぞれから発信されるパターンがあるんですね。

藤本 基本的にそうですね。私がいわゆる弾き語りでコード進行と歌メロと歌詞を作って、それをバンドで合わせていくパターンがまずあって。あとは、(船越)颯斗が「こういうギターを弾きたい」と考えたフレーズの延長で曲構成も作ってきて、それにメロディーや歌詞を私が入れて、その後はスタジオでみんなで合わせてく、っていう。颯斗が弾きたいギターを弾くのがいちばんいいのかなと私は思うので、最近は後者のやり方が増えてますね。

―― 「THUNDER」は高校生のときに作ったというのが頷けるというか。

藤本 めちゃめちゃわかりやすいですよね。そういう10代の感じも出てるし。

―― 歌詞ではパンクロックに出会った原体験を綴ってるところもありますよね。そういう素朴な感情を隠さないのは、藤本さんが書く歌詞の特徴かな、と。

藤本 わりとそうだと思います。何か……等身大みたいなところをいかに詩的に書けるか、みたいなことを考えていて。ただ、書いてる内容は別にというか、自分の中では普通のことだったりはするんですよね。

―― パンクロックらしく、煽るようなことを歌いたい気持ちは?

藤本 そういうのが得意じゃないというか。ライヴとかでも煽って盛り上がるんじゃなく、バンドが誰の目も気にせずめちゃくちゃになってるのを観て、フロアが勝手に感化されるほうが美しいと思ってるんですよね。それに自分の気持ちは自分にしかわからないみたいなところもあるから、強要する必要もないかな、みたいなことも凄く感じてます。

―― あぁ、なるほど。

藤本 あと、ちょっとトゲのある言葉だったり、強く言うみたいなことは颯斗が担ってるところもあって。そういう音楽を聴いてきたし、そういう現場が好きなところもあるし。

―― 歌詞は藤本さんが全部書いてるわけでもないんですか?

藤本 ほとんどは書いてるんですけど、完全に颯斗が書いたのも1曲あって。颯斗が歌ってる「IT'S GONNA BE OK!!」はそうですね。これは彼にしかできないし、私にはできひんなと思って、めっちゃ大好きな曲です。

―― この曲、唯一船越さんが歌ってるじゃないですか。歌いたいという気持ちもあったんですか?

船越 いや、別に歌いたいとかないんですよ、基本。これは家でああいうロックンロールなリフを弾いてたら、メロディーも思いついてバンドに持っていったんですけど、(藤本)梨佐子が歌うのはどうかな、と。ツインギターでやりたいと思ったんですよね。それやったら、梨佐子に歌ってもらうのも負担になるかもしれんし、だったら自分で歌おうかな、って。

―― 結果的にかもしれませんが、声質が両極端なこともあり、いいアクセントになってますね。

船越 そのころ、収録する曲はひと通り揃ってて、この曲じゃなくて「Don't Trust My Brain」を入れる予定やったんですけど、何か弱いかな、というのが自分の中であって。ロックンロールが1曲欲しかったし、家でやってみてたらメロディーもできて。

―― 歌詞は全編英語詞になってますよね。

船越 歌詞に関してはホンマにそんな賢いことが書けないんですよ。遠回しの表現とか難しい言葉とか、最初は日本語で書こうと思ったんですけど、これはちょっと恥ずかし過ぎるな、と(笑)。ルーツにはハイスタもいるし、英語でもいいかな、って。

―― また、ストレートなパンクロックチューンだと「I DON'T CARE」もあって。これもわかりやすくThe Dahliaの顔的存在になるのかなと思いました。

藤本 私が弾き語りで作っていったヤツが元になんですけど、颯斗がイントロやリフを入れてくれて、王道なサウンドにしようか、ってなったので、バンドで合わせてめちゃ変わった感じがありますね。

―― 最初はもっと違うニュアンスを想定してたような?

藤本 何やろな、もうちょいフォークソングじゃないですけど、テンポも遅かったと思うし。柔らかいニュアンスの曲だったと思います。それをウチらの音にしたらこんな感じかな、ってスタジオでやっていったらああいう形になりましたね。

―― 藤本さんのバックボーンにはフォークソングもあるんですか?

藤本 ありますね。歌詞がああいう……例えば、自堕落な生活をしてて、それをどう歌うのか、とか面白味も感じるし。

―― 今回だとゆったりとつぶやくように歌うスローナンバー「夢見心地」もちょっとフォークソング的な匂いがするなと思ってて。若者らしいモラトリアムを隠さない歌詞というか。<もう少し大人になったら歴史のない国へ行きたい>や<意味を持たないことばかりの僕らの存在は自由なのだ>とか、今しか書けないだろうし。

藤本 これは自分がコロナに罹ってたときに意識朦朧としながら書いたからあんまり憶えてないんですけど(笑)、歌詞としてはキレイにまとまったかなと思って、納得いく曲のひとつではあります。

―― 「BULL SHIT!! / GIMME SOME」はかなり激しさに振り切って炸裂してますね。

船越 USのハードコアも大好きなんですよ。それこそ、(レコーディングした)Studio CooperでTURNSTILE系のサウンドにもしてもらって。あれぐらい激しい曲もあっていいし、もしハードコアバンドと対バンになってもあの1曲でしっかり見せれたら強いんじゃないかな、と思って作りました。

―― いろいろとピックアップした曲も多いんですけど、クボさんが思い入れのある楽曲を挙げるとするとどれになりますか?

クボ う〜ん……どれもそうなんですけど、強いて挙げるとしれば「IT'S GONNA BE OK!!」ですね。アレンジを考えてる時期、偶然ずっとサンハウスを聴いてたんですけど、参考にしてみたら上手いことハマってくれて。

―― あぁ、そうだったんですね。そういう往年のバンドの要素を感じさせる曲と言えば「レザーのシューズ」もそうですよね。

船越 僕が骨組みを作った感じなんですけど、いちばん最初のイントロはThe Specialsを引用してみました。

―― あのフレーズから始まることによって、好きなスカミュージックのムードをどうThe Dahliaに落とし込むか、みたいなコンセプトがより伝わってきました。「Little Bitch」をサンプリングしつつ、歌詞もスカの空気感を取り込んでますよね。

藤本 歌詞は私が書いたんですけど、まさしくその通りです。

―― そう考えると、藤本さんは歌詞の書き方が何パターンかありますよね。

藤本 と言いますと?

―― 「ひねくれ者」や「夢見心地」みたく胸の内をそのまま綴るパターンと、「THUNDER」や「デストロイヤー」みたくそれをパンクロックの空気を通して綴るパターンと、「レザーのシューズ」みたく表現したい世界観に言葉を沿わせていくパターンみたいな。

藤本 あぁ、そうなんかな……特に意識してたわけじゃないんですけど、そう言われてみるとそうなんかな、と思います。

―― 歌詞を書くとき、意識するポイントって何かあります?

藤本 曲の雰囲気に合わせて、というのは結構意識してるところではありますね。歌詞を書くのも読むのも好きって言ってますけど、意味をそこまで把握してない英語の曲も全然好きやし。歌詞の重要性はそこまでないんかなと思うこともあれば、やっぱり歌詞に感銘を受ける部分もあるから、そこのバランスはいい感じにできたらいいな、って。ただ、書き方みたいなのはあんまり考えてなかったんで、自然とそういう使い分けをしてたかもしれないです。

―― では、YU-SHIさん的にお気に入りの曲は?

YU-SHI 「ハイウェイラジオここから」がいちばんのお気に入りですね。入り方もカッコいいし、わかりやすく短く、ライヴでやってもバーンって盛り上がる曲なんですよ。

―― 2ビートで疾走する感じがあって、バンド活動がそのまま投影されたような歌詞もいいですよね。

YU-SHI あの曲はめちゃめちゃ好きですね。

―― 先ほどお話した「夢見心地」もそうでしたけど、「ERA」もゆったりしたナンバーでいい位置に入っているなと思いました。ただ、曲調がまた新しいというか、カントリーやジャズの匂いもしますよね。

船越 これは僕が持っていったんですけど、家で(フランク・)シナトラのレコードをずっと聴いてて、そこからのインスピレーションでソロとかが一旦できたんですよ。その後、そのままのコード進行で歌詞を入れるのもいいかな、と。もともとは楽器だけの曲を作ってみたかったんですけど、歌詞とメロディーが入った方がいい感じになりましたね。

―― じゃあ、そこは藤本さんに任せたような。

船越 完全に丸投げでした。「こっから歌詞とメロディーを入れて」って。

―― これまでの曲と角度が違うかなと思ったんですけど、どう受け止めました?

藤本 颯斗がそういう曲も幅広く好きなのは知ってたし、私も好きなんです。だから、ビックリすることはなかったんですけど、どういうテーマで歌詞を書いたらいいんかな、みたいなことは悩んだりしましたね。ただ、結果的に自分が歌ってて楽しいし、いい曲ができたんじゃないかと思います。

interview by ヤコウリュウジ
Vol.03へ続く...

Interview Vol.03

―― 「ERA」みたいな曲があると、バンドとしての可能性も広がりますよね。そういう意味では「AMAZING BLUE」も大きな扉になる予感もしてるんです。エッジの効いたサウンドにちょっとJ-POPも感じさせるようなメロディーがマッチしてていい曲だな、と。

藤本梨佐子(Vo) 「ERA」と同じ作り方でしたね。(船越)颯斗がリフや構成とかを全部作ってきて、そこに私が歌詞とメロディーを入れて。

―― どこから生まれた曲だったんですか?

船越颯斗(G) あれは1回YU-SHIとスタジオに入ったとき、ちょっと新曲が作りたくなってひとりでやってみたんですけど。

―― ひとりで? YU-SHIさんもいるのに?

船越 YU-SHIと2人でスタジオに入ってもあんまりドラムを叩かせないときがあって(笑)。「ええから、ええから」みたいな。

YU-SHI(Dr) 僕はドラムを叩かずに新曲を作ろうとしてる颯斗を見守ってる、っていう(笑)。

―― 何か思いついたことがあったから、それを形にするのにちょっと待ってもらうような。

船越 それでちょっとリフを弾いたりしてたら、「これ、ええやん!」ってなって。そこから構成も作って、ソロもつけて、YU-SHIにドラムはこうして、って伝えて。そこでまとまったのを(藤本)梨佐子に丸投げしました。

―― そのとき、YU-SHIさんはどう感じました?

YU-SHI う〜ん……これがホンマに曲になるんかな、またボツになるんちゃうかな、みたいな(笑)。でも、梨佐子の歌詞とメロディーが入って、めちゃめちゃいい曲になったなと思いました。

―― 言っちゃえば、ある程度まとまったオケだけだとイメージできなかったけど、そこから化けたみたいな。

YU-SHI そうです、そうです。その印象が強かったです。

―― というところで、藤本さん的にはどうでした?

藤本 ……渡された状態でもええ曲やったとは思いますけどね(笑)。

一同 ハハハハ(笑)。

藤本 颯斗も自信満々で「これ、できたでぇ!」みたいな感じで渡してきたし(笑)。

―― まあ、今となっては笑い話にできますね(笑)。

YU-SHI 結構マジでボツになると思ってましたからね(笑)。

―― 他の曲とはまた違うメロディーのニュアンスもいいし、上手く言葉にできない葛藤や苛立ちを無理に説明することなく、そのまま綴ってる歌詞の世界観とも合ってますよね。

藤本 ありがとうございます。サビというか、バーっと歌うCメロみたいなところはどっちがいいかな、と2パターンぐらい用意して、ライヴでやって選んだりもしましたね。

―― イメージはすぐに湧きました?

藤本 いや、全然でした。ミドルテンポでこういう構成の曲で、ボンヤリとしたイメージは描けたんですけど、そこからが難しくて。颯斗の悪いところなんですけど、曲を渡すときは「できた。よろしく!」ぐらいなんですよ。「こういう感じにして欲しい」みたいなことはまったく言ってこうへんから(笑)。

船越 あぁ、そうやな。

―― 好き放題にやってくれ、ってことなんですかね?

船越 僕的に具体的なイメージを伝えて渡すと、そういう曲になっちゃうじゃないですか。それやったら、梨佐子にバーンって丸投げして、めちゃくちゃ迷惑やろうと、これをThe Dahliaっぽくしてもらった方がいいかな、って。

藤本 だから、颯斗から送られてきた曲に歌詞とメロディーをつけたら、「思ってたのと全然違くておもろかった」みたいな感想をもらったこともありますね(笑)。

―― 収録した曲でまだライヴで1回もやってない曲ってあります?

クボ(Ba) ないんじゃないですかね。

藤本 1回もない、っていうのはないような。

船越 「BULL SHIT!! / GIMME SOME」終わりでつなげてるのは?

クボ あぁ、この形ではまだやってないですね。

―― じゃあ、Carpentersの「TOP OF THE WORLD」もやってるんですか?

藤本 全然やってます。

―― The Dahliaって、結構カバーもやってますよね。

クボ よくやるのがThe Clashの「Safe European Home」、SHAM 69の「If The Kids Are United」とか。

船越 一時期、「Take Me Home, Country Roads」もレゲエな感じでやってたり。

―― カバーする候補曲って、誰が持ち込むんですか?

クボ バラバラですね。

―― 「TOP OF THE WORLD」は?

藤本 あれ、何やったっけ?

クボ たしか、オレやったと思う。

船越 カバーは好きな曲がやりたい、ってだけですね。

―― そういった中で「TOP OF THE WORLD」を収録した理由は?

藤本 フルアルバムに入れるとなったとき、The ClashやSHAM 69は今までやってきたし、「がっつりパンクアンセムというよりは、そうじゃない曲をパンクカバーせえへん?」みたいなことになったんですよね。この曲自体に特別な思い入れがあるわけじゃないんですけど、好きな曲ではあったし。

―― 収録順として最後になってるじゃないですか。入れる場所が難しかったのもあったり?

藤本 最初、「カバーが最後?」って私は反対してたんですけど、押し切られたから理由はあんまりわかってなくて(笑)。

―― 押し切った人は?

船越 僕ですね(笑)。カバーが最後になることはあんまり気にしてなくて。全員が知ってる曲ではあるし、いちばん最後に聴きたい曲っていう感じがあったんですよ。理由としてはそこが大きかったですね。

―― そして、このフルアルバムを引っ提げて9月から全21本のツアーが始まります。これだけまとまった本数のツアーは初めてですよね。これまでとはまた違う緊張感やプレッシャーはありますか?

船越 でも、楽しみ以外はないかな。

藤本 楽しみですし、日程自体は決まりましたけど、詳細を詰めるのにバタバタしてるところもあって。緊張を感じる暇もなく、いろんなことがバタバタって進んでるんですよ(笑)。だから、このままの流れで楽しい気持ちのまま、ライヴをやりたいところもありますね。

―― このインタビューの最初の方でも話題に挙がりましたけど、The Dahliaと言えばライヴじゃないですか。こだわりみたいなところはありますか?

藤本 まあ、具体的なことはあんまりないんですけど、こだわらないっていうこだわりはありますね(笑)。

一同 ハハハハ(笑)。

藤本 あとはへんに演じないというか。ありのままで、っていうのをベタやけど意識はしてて。でも、それぐらいですね。妙に背伸びしてもコケるだけやから。

―― たしかにそこは大事かもしれないです。他にはどうですか?

クボ 踊れるライヴにしたいな、っていうのがあって。やっぱ、腰から全身を動かすというか、腰にくるビートを出したいんですよ。

船越 えっろ(笑)。

クボ いや、エロくはないやろ(笑)。

一同 ハハハハ(笑)。

クボ ダンスミュージック的なのも凄く好きなんで、そのあたりは意識してやってるところがありますね。

YU-SHI 僕はまず楽しむことですよね。自分がいちばん楽しむことがいいライヴにつながると思ってて。だから、ミスが連続するとどうしても落ち込むところもあるし、そこは気をつけていかなアカンなと考えてます。

船越 こだわりか……ライヴは好き放題やってるだけなんですよね(笑)。ギターも別に上手く弾こうとしてないし、ただ楽しむマインドと「やるぞ!」っていうテンションだけやし……だから、それをちゃんと保てるか、っていうところかもしれないですね。

―― 逆に、こんなところを観て欲しいみたいなことは?

藤本 ホントにその、音に身を任せるじゃないですけど、無我夢中で踊り狂っていただければと思ってます。みんな、お利口さんな感じもあるというか。例えば、曲が終わるとみんな動きを止めてスッとしてるじゃないですか。お客さんはわざわざここまで来て、お金を払って楽しむ権利を買ってるわけだし、もっと思う存分に楽しんでくれればいいのに、って感じることもあるんですよね。

―― 妙な気遣いはいらない、と。

藤本 サビのところで拳を上げよう、みたいなことも挙げたい人は挙げればいいし、挙げたくなければ別にしなくてもいいし。そういう感じで自分がいちばん気持ちのいいように楽しんでくれればいいな、って。

―― やっぱり、バンドってツアーを経ることによって変わることが多いと思うんです。そういったところで長いツアーを終えたとき、期待したい自分たちの姿はありますか?

藤本 ツアーに限らず、時間的な経過としてもう少し今よりも演奏力が上がっていれば、と。それもまた武器になるだろうし。でも、それぐらいですかね。ツアーはひとつひとつ楽しみたいっていう気持ちの方が強いんで。ただ、もうちょっと演奏力があったら、より楽しめるだろうなとは思うし。

YU-SHI 僕も特にこうなっていきたい、というのはなくて。演奏技術が上がって、ひとつひとつ楽しめたらいいな、って感じです。

―― そこはThe Dahliaの共通見解なのかもしれませんね。他にはどうですか?

クボ そうですね……全21本を通して、クールになりたいですね。ちょっと頑張ってクールを手に入れたいというか。

―― 人によってクールって意味合いが結構違うじゃないですか。アメリカ人と日本人で捉え方が結構違ったりするし。

クボ 僕のイメージはGang of Fourとか、飄々としながらも危うさも感じさせる、みたいな。ああいうのが凄く好きなんですよ。だから、日本人的なクールに近いっすね。

―― まだそこには至ってないような?

クボ どう?

船越 若干キテんちゃう?(笑)

一同 ハハハハ(笑)。

クボ 嬉しいな(笑)。

船越 あと、フェスとか出たいっすね。

―― このツアーで実力と共に知名度も上げて、そういうところに呼ばれるようなバンドになれれば、みたいな。

船越 ライヴをどんどんやっていけば、演奏はついてくるんちゃうかな、と思ってるところもあるし。地方とかいろんなところをまわって、知名度も上げてデカいステージにも立ちたいです。

―― バンドとして初のフルアルバムも完成して、リリースツアーもあって。次なる目標を挙げるとすれば、そういった大きいステージにも立てるバンドになること?

船越 そうですね。

藤本 ずっと味園ユニバースに出たかったんですけど。

―― 年内でビル自体が閉鎖されるんですよね。

藤本 だから今、何がいいかな……でも、まずは物理的にデカいステージっていうよりかは、100人キャパや200人キャパのところで、どれだけ来てくれる人がいるのか。そこを増やしたいなと思ってて。自分たちを観に来てくれる人はまだ何十人単位だし、その桁を増やしていければ、と。

―― そこが埋められるようになれば、自然と次に目指すところも見えてきそうですよね。

藤本 BIGCATとかZeppとか、もちろん機会があれば出たいんです。ライヴハウス的な狭い空間でやるのは大好きなんですけど、意識としてずっとそこにいたいわけじゃなくて。アンダーグラウンドにこだわる人もいると思うけど、そうじゃないので、私たちは。面白そうやったらデカいとこも行こうや、みたいな感じでやってるし。武道館に絶対立ちます、みたいな目標は本心としてないんですけど、いつかはでっかいところでもやれればなと思ってます。

interview by ヤコウリュウジ