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Interview vol.03

● 歌詞からは、閉じこもった世界から仲間を獲得して、新しい生活へ踏み出していく人の物語、みたいなテーマを感じたんですよね。基本的に歌詞は、皆さんの実体験がもとになっているんでしょうか。

GORI 妄想とか空想ではなく、自分が思ったこと、感じたことしか書いていないですね

Shiori わたしも自分の実体験をもとに歌詞を書くことが多かったです。

● では曲ごとに聞かせてください。1曲目の「On a new note」は曲名のとおり、スコットランド・ガールの新しい章の始まりを綴ったものでしょうか。

GORI そうですね。

● 歌詞には《失った物は多いかもしれない/見えなくなった物は多いかもしれない/でもそれはそれで、今のままで全然いいんだ/君はもう一人じゃないんだから》とありますね。

GORI 誰かにアドバイスしているようにもとらえられると思うんですけど、これは自分に言っていて。さっきも言ったように、バンドを続けていく上ではホンマにいろいろあって。しんどいこと、つらいこと、無くしたものも多いんですけど、「今のままでいい」と思えたんですよね。めちゃ恥ずかしいんですけど、今はメンバーがいることのありがたみを、より密に思うというか。このメンバーがいるから大丈夫や、みたいな感じですね。今がいちばんバンドをやっていて楽しいし。「ここからがスコットランド・ガールの新しい始まり」という感じです。

● 作曲はGORIさんですが、二人でハモリつつ、Shioriさんの歌の方がメインで。こういうパターンもあるんですね。

GORI バランス的にShioriがメインの曲を増やしたかったし、二人の掛け合いもスコットランド・ガールの武器だと思うんで、1曲目から二人の声がドカン!と弾けるような感じで作りました。

● 次の「Change or Nothing」はGORIさんが歌っていますが、《僕はたった一人、置き去りにされているようだ》とありますね。《もう一人じゃない》と歌った1曲目の前段階、葛藤している時期のような。

GORI そうですね。実際、この曲は古くからあったもので。自分がネガティブで、センチメンタルになっていたときに書いた曲です。混沌とした世界を想像しながら書いていました。

● 《傷だらけの世界/傷だらけの星》とありますね。

GORI なんか、地球がヤバいなって思って。で、地球をそういうふうにしたのは人間やなって。そこから変わることができたら美しい世界が開かれているはずだ、みたいなイメージです。

● この曲はアニソンにも使えそうだなって思いました。

GORI マジっすか(笑)。正直、アニソンにはそんなに興味はないですけど、使ってもらえたらうれしいですね。

● 3曲目「Refrain」はShioriさんによる曲ですね

Shiori わたしは基本的にポジティブ・シンキングなんですが、マイナス思考になるときもやっぱりあって。そんなときに書いた歌詞です。

● 《もしかして僕はひとりぼっちだったの…?》と、孤独な心情が綴られていますね

Shiori みんなと一緒にいるときは大丈夫なんですけど、一人になると孤独に感じることがまれにあって。最終的には前向きな感じにしたいと思って、イントロの部分はそうなっているんですけど。

● 「Dream of you and me」という曲では《何度も何度も夢を諦めることを考えて》とありますね

Shiori メンバーが今の3人になってから、バンドのことですごく悩んだ時期があったんですよ。「今まで前を向いて歩いてきたつもりだったけど、実は進めてなかったのかな」って。そんなときにJunさんのレーベルからお話をもらったり、10-FEET主催の『京都大作戦』に誘ってもらって。「自分はまだ歌っていていいんだ」「まだやめるときではないんだ」って思うことができました。

● 次の「Always with love」の《人生は長いようできっと短いから/できるだけたくさんの時間笑っていたいなって思ってる》というフレーズはどんなことを思って書いたんですか?

Shiori 『As I am』というアルバムのタイトルは“自分らしく”という意味で、そこにもつながるんですけれども、わたしは生きていく上で自分らしさを大切にしたいと思っていて。この歌のサビにもあるように《楽しい時にはたくさん笑って/悲しい時にはたくさん泣いて》っていうことを大切にしていればきっと自分の人生はいいものになるはず、っていう歌です。

● シンプルなメッセージでも実体験をもとに書いているから説得力がありますよね。ネガティブな下地があるからこそのポジティブな言葉という感じがします

Shiori そうですね。わたしもネガティブに考えてしまうときがあるし。でも最終的には絶対にポジティブに考えるようにしていて。その両方の要素が入っている歌詞かもしれないです。

● 「Faith」はShioriさんとGORIさんの共作ですが、音楽こそが自分たちのやるべきことだということを歌っていますね

Shiori そうですね。これはRyoが入ってから初めてできた曲で。この3人でできるところまでやっていこうという決意の歌ですね。

● 《歌うことは生きること/愛すること》というフレーズが印象的ですね。

GORI Ryoが正式メンバーになったときの自分の心情をストレートに書きました(笑)。

● バンドで音を出せることの喜びをあらためて噛み締めた感じでしょうか。

GORI まさにそうですね。バンドは自分の人生そのものという感じもありますし。歌うことと生きることは愛することと同じやなって、そのときに強く思ったんですよね。

● 7曲目の「Selfish」は2ビートでアルバムの中で一番パンキッシュな曲で、シンガロングもありますね。歌詞では、さんざん振り回されたけど、そのおかげで新しい自分に出会えた、ということを歌っていて。これは具体的な誰かのことなんですか?

GORI まぁ、いろいろです(笑)。自分でもこういう歌詞を書くことになるとは思ってなかったんですけど。

● 「Eyes on Me」は『ファイナルファンタジーVIII』のエンディング曲のカバーですね。

GORI ぼくが高校を卒業する直前、Shioriと知り合ったころに、彼女がライブをやるっていうんで観に行ったんですよ。そしたらこの曲を歌っていて。ぼくはゲームもやっていたし、すごい名曲やなって思っていたんで、ぜひスコットランド・ガールでもやりたいと思って。前のドラムのときにもやったことがあるんですけど、そのときはボツになって、それで今回またやってみたんですけど。アレンジはけっこう考えましたね。どんなふうにスコットランド・ガール節を織り込んでいこうかって。

● ぼくは最初、普通にスコットランド・ガールの曲だと思って聴いていましたよ。Shioriさんは当時、どうしてこの曲を歌っていたんですか?

Shiori 友達に教えてもらって聴いて、めっちゃいい歌だと思って。

● そして「Sunny day」。デビュー作『Make a story』にも入っている曲ですが、なぜ今回、再録したんでしょうか。

GORI 「Sunny day」は二人のときからある曲で、今でも毎回ライブでやっているんですよ。でも『Make a story』はいま廃盤になっていて、新しくぼくらのことを知ってくれた人は聴くことができないので。

● この曲はちょっとハイスタっぽいと思いました。

GORI あぁ、「NEW LIFE」ですよね。それはよく言われます(笑)。ハイスタの曲は全曲弾けるくらい好きですね。

● そして「I'm greedy」はKEN YOKOYAMAっぽいなって思いました(笑)。

GORI ホンマですか。まったく意識してなかったですけど、それはうれしいです(笑)。

● この曲は《人は欲を持ち過ぎてしまった/世の中の不公平や理不尽なんていらない》、《履き違えた自由》、《小さな幸せを喜び合えたら、それ以上はいらない》など、新自由主義による格差社会について歌っていますね。

GORI そうですね。最近の政治・経済だったり、世の中の風潮に対する疑問を歌詞にしてみました。「そんなに欲を出して求めすぎんでもいいのにな」っていうのは日ごろから思っていて。そのせいで不公平とか理不尽な出来事が生まれているじゃないですか。優劣を付ける必要とかもないと思うし。小さな幸せだけでも絶対に満足できるはずやのになって。

● 「Within ourselves」は作詞がShioriさんで、作曲がGORIさんですね。《いくつもの選択肢を選んで自分の信念を貫いていくんだ》、《自分の人生がどうなるかはいつも自分次第だよ》。これはアルバムタイトルの『As I am』にも通じるテーマですよね

Shiori そうですね。常にその言葉を自分の胸に置いているというか。わたしもよく「いいことないかな」とかって考えてしまうんですけど、いいことって誰かから与えられるものではなくて、自分の力でつかんでいくものだと思っているんで。自分の人生をよくしていくのは自分次第だって思っています。

● その通りですよね。そして「I'll be seeing you」はバラードから始まるいい曲ですよね。

GORI 「こんな曲です」って最初に持っていったかたちがそのまま反映されて。さくっと出来上がったんですけど、かなり手応えを感じています。

● 《今はまだ旅の途中》、《またいつか“必ず会おう”》と、これも具体的なエピソードを感じさせる歌詞ですが。

GORI 出会いと別れって、すごく美しいものなんじゃないかと思ったんですよね。地元の滋賀ビーフラットというライブハウスに海外のバンドが来たことがあって。片言の英語で会話をしていたんですけど、すごく仲良くなったんです。そしてお別れのときに、「グッド・バイ」とか「シー・ユー・アゲイン」みたいな軽々しい言葉ではなくて、「絶対にまた会おうな」って伝えたかったんですけど、そのときは言葉にすることができなくて。「I'll be seeing you」って、本当に大事な間柄の人にしか言わへんから、美しいものだと思うんですよね。

● この曲は歌い終わると同時に、唐突に終わりますよね。ほかにもそういう曲がいくつかありますけど。

GORI そういえばそうですね。まったく意識してなかったですけど

Shiori 「こういう終わり方があってもいいよね」ってやっていたのが多くなってしまったというか(笑)。

GORI メンバー全員「これで完成でしょ」ってなってるんで、これでいいと思います。

● 最後の「Life is Beautiful」は唯一の日本語詞ですね。

GORI 挑戦してみました。音源に日本語詞の曲が入ったのは初めてですね。

● バンドによっては日本語で歌うと歌謡曲のように聞こえる場合もあると思うんですけど、まったく違和感がなかったんですよね。ほかにももっと聴いてみたいです。

GORI & Shiori これからも増やしていこうと思います。

● バラードですが、歌詞もメロディーも究極的にエバーグリーンな表現ですね。

GORI ありがとうございます。作曲はスッとできましたね。歌詞は、東日本大震災の被災地に何度か物資を届けに行かせてもらったんですけど、初めて行ったときの直後に書いたんですよ。もろに震災のことを書いたふうにはなっていないと思うんですけど。

● 普遍的な感じですよね。

GORI 人間が生きる意味の一つには、子孫を残すこともあると思うんですよ。そういうことを考えたらこういう歌詞になりました。親と子がお互いに《あなたがただ生きている/それだけでいい》って思っているような。“命”と同時に“家族”がテーマでもあります。

● GORIさんはここではコーラスもやりきっていますね。

GORI ライブでも気持ちよく歌っています(笑)。

● さて、アルバムを一枚通して聴くと、映画を見終えたような満足感がありますよね。

GORI & Shiori めっちゃうれしいです。

● 失意と決意、出会いと別れ、幸せ、命、家族についてドラマチックに描かれていて。勇敢に駆け出していくイントロダクションからバラードのエンディングへと帰結する曲順もいいですよね。

GORI 曲順についてはJunさんも一緒に考えてくれました

Shiori それぞれの曲を生かすにはどんな曲順がいいか、すごく考えましたね。

● 『As I am』というタイトルは、アルバムを総括する言葉として選んだ感じなんでしょうか

Shiori そうですね。スコットランド・ガールらしさ、自分らしさを詰め込むことができたアルバムだと思いましたし、これからもそれを大切にしていきたいという思いを込めて、このタイトルにしました。

● リスナーもそれぞれが自分らしさをもって、幸せな気持ちで暮らすことができたらいいですよね。些細なことにも喜び合ったり、やりたいことがあったらやってみたり

Shiori 本当にそうですね。

● 今回のアルバムは暗中模索の中から新しいスタートをきって完成させた作品で。スコットランド・ガールのスタイルが完成したと同時に、いろんな思いも詰まっているし、すごく充実した内容ですよね。なんか、一つ完結した感じがするというか、まだ作り終えたばかりですが、次にこれを超える作品を作るのって、なかなか大変そうな気がするんですけど(笑)。

GORI それは自分たちでもちょっと思っているんですよね(笑)。でも、また頑張って作ります!

● まずはレコ発ツアーですね。今回は34公演を予定されていますが、どんなツアーにしたいと思いますか?

GORI 今はバンドのモチベーションもすごく高くて。楽しむことを忘れず、しっかりと回ってこようと思います。そして成長して帰ってきたいと思います

Shiori 北海道や東北をはじめ、今回初めて行く場所が多いのですが、そういった場所でもわたしたちの音楽をちゃんと伝えて、楽しんでもらって、たくさんの人たちに知ってもらいたいです。

Ryo いろんな人に聴いてもらいたいですね。友達のバンドといろんな場所へ行くのも楽しみだし、いいツアーを回れるように頑張ります!

Interview by 岩崎一敬 (indies issue)
Photo by Jon / teru