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Interview vol.02

● ではパーソナリティーの部分も聞かせてください。Shioriさんはこれまで激しさに固執していたということでしたが、歌にも勇敢な印象があって、芯の強さを感じます。

GORI ちゃんと芯を持ってるなっていうのはよく思います。持ってくる曲に対してもこだわりがあるし。ライブでも、自分はけっこうメンタル的に弱い部分があるんですけど、Shioriはあまりブレることがないですね。女の子やのに肝が据わってはるんですよ。

● それはShioriさんの自然体? それとも「ロックバンドたるもの」みたいな思いがあるんでしょうか。

Shiori “ロック魂”みたいなものは特に意識はしてないですね(笑)。スコットランド・ガールをやり始めて7年くらいになるんですけど、自分のスタイルとか個性を確立できたなって実感できたのはつい最近なんですよね。これまでもボヤっとはあったんですけど、貫けなかったというか、ずっと試行錯誤してきて。やっと最近、「自分はこのままでいいんだな」って思うことができました。

● GORIさんはメンタルが弱いというお話がありましたけど。

GORI けっこう、というか、かなりネガティブなんですよね。お客さんの反応やったり、自分自身の歌や演奏に対してマイナス思考が働いてしまって。でも今のShioriの話を聞いて、自分はまだ確立はできていないですけど、見えはじめてるなっていうのは思いますね。昔は心が折れることが多かったんですけど、最近はそういうことはほとんどなくなりましたし。

● 以前はその状態でどうして人前に立って演奏していたんでしょうね。

GORI それは音楽が好きやからですね。中学生のころからアコギで弾き語ったりはしていて、そういうのは好きなんですけど、ライブになると人の目を気にするようになってしまって。人前に出たがるくせに、出るとネガティブになってしまうという(笑)。でも、この3人になって、この1年くらいは楽しくやれていますね。

● そもそもGORIさんは学校とか集団の中ではどんなタイプだったんですか?

GORI 完全にいじられキャラですね(笑)。バンドの先輩とかと一緒にいると、すごくいじってもらえるんですよ。

Shiori それが好きやんな(笑)。

GORI そこには愛があるから楽しいですね。でも人見知りやから、滋賀のバンドの後輩とかからは怖がられていると思います。

Shiori そんなことないで(笑)。彼はホンマにマイナス思考なんで。実際はすごく慕われていますよ。

● 後で曲ごとに触れていきますけど、歌詞からはそんな性格が読み取れました(笑)。

Shiori アハハハ。

GORI マジっすか(笑)。

● バンドを通して自分の性格を克服しようというテーマも感じたんですよね。

GORI そうですねぇ。そうしようとは思ってないですけど、そうなっていると思います。悪くいえば、バンドを利用して自分自身をもっとよくしていこう、みたいな。

Shiori 悪くないよ。(笑)私もバンドを通して自分自身を成長させたいと思っているしね。

● 今は全国的な活動を展開されていますが、どんなふうに広がっていったんでしょうね。やっぱりバンド活動って、人のつながりが大きいと思いますが。

GORI そうですね。全国に広がっていったのは、全国から滋賀にツアーをしに来てくれるバンドと仲良くなって、ぼくらのことを地元に呼んでくれたりとか。そういう感じで広がっていきましたね。

● 2010年に発表した『Meaning of Life』までは着々とリリースを重ねていましたよね。活動としては順風満帆という感じだったんでしょうか。

GORI そうですね。初めに『Make a story』をリリースする段階で、フル・アルバムまで出すことがレーベルとの間で決まっていて。だからそれに向けて曲を作って、レコーディングをして。かなり忙しかったですけど、順調な流れでしたね。

● そこから転機となったのは、オリジナル・ドラマーの脱退ということになりますか。

GORI そうですね。その同時期にレーベルを抜けることになって。

Shiori たまたま時期が重なったんですよね。それでわたしとGORIの二人になって、新しいドラマーを探すことになったんですけど。今のRyo が入るまで1年ちょっと、サポートの人にたたいてもらいながら踏ん張っていました。

GORI かなりつらかったです。

Shiori 船が沈むような思いでしたね。気持ちの上がり下がりも激しくて。結成時のドラマーがいないというのは本当に精神的にしんどかった。このままバンドを続けられるのかなって思いながら、GORIと励まし合っていました。そこからRyo が入ってくれるってなって、やっと光が見えて。本当にうれしかったです。

● Ryoさんは元スカ・フリークスのメンバーですね。

Shiori 当時、まだスカ・フリークスをやっているときに、「よかったらヘルプでたたかせてください」って声を掛けてきてくれて。それで最初はサポートというかたちで何回かライブに参加してもらって。

GORI Ryoはスカバンドをやっていたんですけど、メロコアの曲がすごく好きなんですよ。スコットランド・ガールのこともすごく好きでいてくれて。「スコットでたたかせてくださいよ!」って言われたときは、最初は冗談だと思っていたんですけど、けっこう真剣に食いついてきてくれたんで「一回スタジオに入ろうか」って言って。

● Ryoさんは当時、どんな思いで声を掛けたんでしょうか。

Ryo スコットのことが好きで、すごくファンやったんですよ。当時、ぼくはスカ・フリークスをやめようかなって悩んでいたところで。そこにスコットのドラムが抜けたって聞いて、ぜひ自分が入りたいなって。

● 最初にスタジオで音を合わせたときの印象はいかがでしたか。

Shiori わたしはドキドキしながら、未来を想像しながらやっていましたね。

GORI Ryoがやっていたのがスカバンドだったので、メロコアのノリとは全然違ったんですよ。最初はそこですごく苦戦していたんですけど、Ryoもよくなりたいと思ってくれたんで。今やその壁は完全に乗り越えましたね。

● その中で2013年に自主レーベルからリリースしたミニ・アルバム『Landmark』は、スコットランド・ガールにとってどんなタイミングで、どんな位置付けとなる作品だったんでしょうか。

GORI 『Make a story』、『Meaning of Life』を出した当時のレーベルとはゴタゴタがちょっとあったんですけど、そこに対する自分の不信感を払拭するためにも、一回、自分たちだけの力でどれだけできるのか、やってみようと思ったんですよね。タイミング的にはRyoが正式加入してちょうど1年で。1年間しっかり練習して、「今のスコットランド・ガールはこれです」って提示できるものを作りたかったですね。結局、自主ではいろいろ限界があることを知りましたけど。CDに対しての考え方がちょっと変わりましたね。以前は正直、もっと軽く考えていました。今は一枚のCDを作ることにズシッと重みを感じています。そういう意味では一度、自主でやってみてよかったなって思います。

Shiori 『Make a story』はわたしがバンドに入って一年くらいで出したんですね。その後にすぐ『Meaning of Life』の制作に入って。だからトントン拍子という感じだったんですけど、そこから『Landmark』までは数年空いて。久しぶりの音源というところで重みがあったし、やっと出せてうれしかったし。自主で出すことは初めてのことばかりで正直、大変だったんですけど、新しいメンバーも入って、「これからまた一からみんなでやっていくぞ」っていう証の一枚ですね。すごく大切な作品です。

Ryo ぼくは、まったく新しい環境の中で、まずは自分が馴れていくことを心掛けていたんですけど。スコットランド・ガールに加入してからの1年は、人生の分岐点ともいえるほど濃い時間でした。

● Ryoさんが入った『Landmark』を聴いて思ったのは、演奏の勢いが増したということでした。3人の演奏の一体感はそのままに、より勢いが凝縮された感じがありますよね。

GORI ありがとうございます。その意見はうれしいですね。

Shiori 新しい作品を出すごとにちゃんと成長できているなっていう実感はありました。

● アレンジがそれまでより緻密になっていると思うんですが、それはスコットランド・ガールのアンサンブルを構築しなおそうという思いもあったんでしょうか。

GORI あまり意識はしていなかったですけど、より真剣に取り組んでいた気はしますね。とにかく必死になって作っていました。

Shiori この時期は、自分たちの売りってなんだろう?って模索していましたね。『Landmark』のときはまだ答えが出ていなかった気がします。

● 今は明確になっている?

Shiori そうですね。メロディーの付け方、男女両方がメインのツインボーカル、3人でのコーラスワーク、それはほかのバンドにはないものだと思っています。GORIの声質と私の声質は全く違うし、一見合わなさそうに思うのですが、逆にそれが絶妙なコンビネーションになっているのも私達の持ち味だと思っています。

GORI そうやね。最近はバランスが大事やなって分かってきて。今はいろいろ試しながらやるような余裕も出てきました。

● そういった強みを具体的に落とし込んだのが今回のアルバムということですね。

GORI & Shiori そうですね。

● さて、『Landmark』の後、2013年12月に、Jun Grayさんのレーベルの第一弾となったコンピレーション『And Your Birds Can Sing』に参加しました。

GORI 『Landmark』のレコ発ツアーが終わったころに、もともとよくしていただいていたJunさんに声を掛けていただきました。

● Junさんはスコットランド・ガールのライブに何度も足を運んでいたようですね。最初に出会ったときはどんな話をしたんですか?

GORI Junさんは八王子に住んでいて。『Meaning of Life』のリリースツアーで八王子に行ったときにたまたま観てくれたんですよ。会場でJunさんを見つけたので音源を渡して挨拶したんですけど、長時間、話をさせてもらって。「若い世代の子にも本当に頑張ってほしい」ってしきりに言っていたのを覚えています。

● その時点ではジュン・グレイ・レコーズはまだ発足していなかったと思いますが、コンピに誘われたのはいつだったんですか?

GORI 2013年の8月ですね。

● 3年の交流を経て、ということだったんですね。

GORI 『Landmark』をリリースする直前、京都でKEN BANDと対バンさせてもらったり、そのほかにもKEN BANDが関西でライブをやるときには挨拶させてもらっていて。音源を送って、感想をもらったりもしていました。

● どんな感想をもらったんですか?

GORI 今でもはっきり覚えているんですけど、「Ryoが入って、アレンジも楽曲のクオリティーも上がったよね」って。

● そういうやりとりがあった中でジュン・グレイ・レコーズからオファーがあったというのは、かなりドラマチックな出来事だったんじゃないですか?

Shiori 大事件でしたね(笑)。

● どんなふうに話をもらったんですか?

GORI コンセプトとしては「女性がメインのバンド」ということだったので、ウチのバンドはぼくも歌っているし、大丈夫なのかなって思ったんですけど、「スコットみたいなのも全然ありなのよ。GORIが歌っててもOKだから」って。

● それはGORIさんが「自分も歌いたいんだ」って押し通したわけではなく?

GORI そんなに強くは言ってないです(笑)。「フォゲミも両方歌っているし大丈夫よ」っていうことだったんで、歌いだしは自分にしてしまいました(笑)。

● それは狙った部分もあったんですか?

GORI いや、自分が作った曲だったから自然とそうなった感じで(笑)。

● それで、今回のアルバムの話はいつごろからあったんでしょうか。

GORI Junさんからはチラチラとあったんですよ。アンリミッツの単独作の話が決まったときとかに、「スコットランドもやろうよ」みたいな。

Shiori わたしたちにとってJunさんは憧れの人だから、Junさんからお話をもらえて本当にうれしくて。やっぱり自分たちが出したいと思うレーベルじゃないと嫌だったので。でも正直、最初は本気に受け取っていいのか分からないところがあって……。

GORI ざわざわしとったな(笑)。ピザのスタッフの方とアルバムについて具体的な話をしてはじめて、「あっ、決まったんや!」って確信がもてました(笑)。それで、Junさんにどんどん曲を送って、意見をもらったりとかして。曲作りはかなり頑張りました。

● 楽曲の完成度も演奏も過去最高だと思いますね。ドラマチックでエバーグリーンなメロディーのよさが引き立っていて、それが勢いのある演奏と相俟って、感情を揺さぶられました。

GORI ありがとうございます。さっきも話したようにバンドの売りの部分を全面的に押し出せるものにしたいというのはありましたね。二人のボーカルのバランス、コーラスの絡ませ方もすごく意識しました。そこはJunさんからも意見をもらっていて。「GORIが主張しすぎ」っていう部分はちょっと自粛したりとか(笑)。

● 演奏面ではどんなことを意識しましたか?

GORI なるべくシンプルにすることを心掛けましたね。『Landmark』が悪いわけではないんですけど、アレンジをやり過ぎて分かりづらくなっている部分があったんで、できるだけシンプルにしようと思いました。まぁ、中にはいろいろやっている曲もあるんですけど(笑)。

Shiori 「この曲はシンプルにしよう」というものもあれば「この曲はリフ推しで、こだわれるだけこだわろう」というのもあって。全体的にはメロディーも構成もシンプルになって、お客さんにより伝わりやすくなったなって思います。

Ryo ドラムも、個人的にはいろいろやりたいタイプなんですけど、今回は歌を生かすことを優先して、邪魔になるようなフレーズは削りました。だから基本的にはシンプルな演奏で、キメるところはキメるというのを心掛けました。

● その結果、スケール感が生まれていますよね。レコーディングはスムーズに進んだ感じですか?

Shiori スムーズに進まなかったところもあるんですが、全体的には今までよりも早く終わりましたね。

GORI 楽器の録りはなかなか難航したんですけど、歌録りは早くできて。妥協ではないですけど、ニュアンスを重視したのがよかったですね。今まではピッチを気にし過ぎていて、唄心に欠けていたところがあったんで。今回はピッチの正確さよりも、唄心が出ていればOKにしました。

● Jun Grayさんからはほかにどんなアドバイスをもらいましたか?

Shiori 基本的にはバンドに委ねてくださっていて。いつも「いいね!」って、褒めてくださっていました。

Interview by 岩崎一敬 (indies issue)
Photo by Jon / teru
Vol.03 へ続く