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Interview vol.01

● 『As I am』、すごくよかったです。これ以上ないというくらいのいいメロディーを、エネルギッシュなメロディック・パンクのサウンドでプレイしていて。

GORI ありがとうございます。

● 起伏のあるエバーグリーンなメロディーに、パンキッシュな演奏をあてるというスタイルは、デビュー作『Make a story』(2009年)の時点ですでに出来上がっていると思いますが、どのようにしてこういうスタイルになったんでしょうか。

GORI 『Make a story』は5曲入りなんですが、そのうちの4曲はもともとShioriがピアノで作曲したものなんですよね。それをメロディック・パンクにアレンジしました。

Shiori わたしもメロディック・パンクが好きなんですが、それ以前からR&B寄りの音楽もずっと好きで。ピアノでバラード調の曲を作って、それをバンドに持っていってメロディック調にするというやり方が多いですね。

● ではShioriさんのR&Bからの影響が背景にはあるんですね。

Shiori そうですね。作っているときは特に「R&B調にしよう」というつもりはないんですが、後から考えたら自然にそういう色が出ていたのかなっていう感じですね。

● いわゆるメロコアとかメロディック・パンクって、ハイ・スタンダードがたくさんのカバーをしていたように、カバー文化があるじゃないですか。その中でオールディーズのポップスとの相性のよさが発見されたり、ハワイアン6が日本の歌謡曲をモチーフにしたり、ロコフランクが80年代のポップスをモチーフにしたり、次世代のバンドがさらに裾野を広げていきましたよね。スコットランド・ガールとか、あとはフォーゲットミーアノッツもそうですけど、こういうR&B的なエバーグリーンなメロディーというのも、出るべくして出たという感じがするんですよね。まぁでも、Shioriさんの場合は意図的に狙ったわけではなく、自然にこうなったということなんですね。

Shiori そうですね、気付いたらそうなっていたっていう感覚が近いですね。

GORI 狙って作ったという感じではなかったですね。

● 最初はピアノの弾き語りの状態だったわけですよね。そこからどんなふうにこういうサウンドになったか、というのは興味深いです。

GORI もともとメロコアのライブとかにはよく遊びに行ってたんですよ。そこで自分らもそういうふうになりたいって思ったというか。自分たちが作る曲でお客さんが楽しんでもらえたらなって。

Shiori 確かに、わたしたちのメロディーはバラード調にもできると思うんですけど。でも、わたしたちはもともとメロディックの音楽とかライブがすごく好きで。やりたいのはパンク系の音楽なんですよね。そこに自分たちが好きなメロディーを乗せて、お客さんに提示したいなっていうのが始まりですね。

● スコットランド・ガールの演奏からはロックバンドとしてのスピリッツがしっかりと感じられて。ライブハウスで上の世代のバンドを生で体験してきたんだろうなっていうのは音源からもしっかり伝わってきました。繰り返しになりますけど、その上で、エバーグリーンなメロディーで歌っているというのがスコットランド・ガールの魅力で。フォーゲットミーアノッツとかも近いところではありますけど、すごく希少な存在だと思うんですよね。

GORI ありがとうございます。ぼくは小学生のころから、いわゆる“泣きメロ”がすごく好きだったんですよ。その中で、Shioriが作ってくる曲がけっこう自分の中で斬新だったので、それに影響されて、自分も泣きメロをどんどん作りたくなっていきましたね。泣きメロといってもいろいろあるし、それぞれ好みもあると思うんですけど、自分にとってはちょうどツボにはまったメロディーだったんですね。「おれ、こういうの好きなんだ」ってあらためて思ったというか。「スコットランド・ガールはこういう曲で攻めていくバンドになるな」って、その時に思いましたね。個人的には、スコットランド・ガールのメロディーはどこのバンドにも負けていないと思っています。

● ちなみにフォーゲットミーアノッツとはジュン・グレイ・レコーズのコンピレーションにも一緒に参加していて、比較されることも多いんじゃないかと思いますが、意識することはありますか?

GORI やっぱり「フォーゲットミーアノッツっぽいね」って言われることはよくありますね。でもそれは昔のことで。今はあまり言われなくなりました。『Make a story』のころとかは、かなり行き当たりばったりで作っていて。確かにフォゲミに近かったとは自分でも思うんですけど。でも、今のスコットランド・ガールはあまり似ていないと思っています。

Shiori もちろんフォーゲットミーアノッツは大好きなバンドで。男性二人で女性一人という編成も一緒だし、やっている音楽も似ているし、初めてわたしたちのことを知った人は「フォーゲットミーアノッツみたいやな」って感じると思うんですけど。でも、よくよく聴いていけば、それこそ今回のアルバムを聴いてもらえれば、ちゃんとスコットランド・ガールの色があることが分かってもらえると思いますね。

● 借り物の意識では人を感動させることはできないと思うし、スコットランド・ガールがこれまで真摯な姿勢で積み上げてきたことは、今回の音源からもしっかりと伝わってきました。フォゲミとはよきライバルという感じでしょうか。

Shiori そうですね。ライバルですし、メンバーのことも大好きですし、バンドとしてお世話にもなっているし。普段からいい刺激をもらっていますね。

GORI 自分で言うのもなんですけど、フォゲミとはむっちゃいい関係やと思います。

● コンピ以外のところでも普段から交流があるんですね。

GORI はい、今回のツアーでも何箇所かお声を掛けさせてもらいました。

● さて、もともとライブハウスでメロディック系のバンドをよく観ている中で、自分たちもバンドをやり始めたということで。ライブハウスに行き始めたのはいつごろですか?

GORI 17歳、高校2年生の時ですね。最初にライブハウスに行ったのは、実は自分がやっているバンドの初ライブだったんですけど。それをきっかけに、よく行くようになりました。ぼくも昔はキッズだったんで、それまではCDを聴き漁っていました。

● 影響を受けたバンドというと、どの辺になりますか?

GORI メロディックに入ったきっかけはハワイアン6でした。ハワイアン6の「PROMISE」という曲を聴いて衝撃を受けて。そこからハイ・スタンダード、NOFXとか、さかのぼって聴いていった感じですね。

Shiori わたしが最初にライブハウスに行ったのは高校1年生の時で。昔から音楽は好きで、吹奏楽とかもやっていたんですけど、それまではバンドとまったく無縁で。正直、「なんかガチャガチャしてるな」って、バンドについてはあまりいい印象をもっていなかったんですね。でも、歌を歌うことは昔から好きだったので、高校の時に友達と一緒に軽音部に入ったんです。そこから徐々にバンドを知りはじめて。ある日、部活の先輩がライブをやるっていうときにライブハウスに行って、そこで初めてライブの楽しさを知りました。そして自分もいつかライブをする側になりたいなって思って、ライブハウスにもよく行くようになって。そしてオリジナル・バンドを結成する、という流れですね。先輩からはいろんなバンドを教えてもらったんですけど、その中でもダストボックス、ロコフランクに衝撃を受けて。それからオーバーアームスロー、ハイ・スタンダードとか、メロディックにハマっていきました。

● お二人はメロディック・パンクの特にどんな部分に衝撃を受けたんでしょうか。

GORI ハワイアン6を聴いたとき、ホンマにびっくりするくらい衝撃を受けたんですけど。爽快感のある演奏に、すごくいいメロディーが乗っていて、めちゃカッコええやん、みたいな。

Shiori わたしも同じような感じで、2ビートの独特なノリにきれいなメロディーが乗っていて、それがすごく斬新に思えたんですよね。

● スコットランド・ガールの結成は2008年ですが、どんなふうに始まったんですか?

GORI オリジナルメンバーは今やぼくだけなんですが、もともとは、ぼくが前にやっていたバンドが解散して、当時まだ高校生だったドラムと二人で始めたんですよ。最初の数ヵ月はバンドの先輩にベースをサポートしてもらいながらライブ活動をしていて。Shioriはもともと、ギター/ボーカルで別のバンドをやっていて、ぼくが前にやっていたバンドともよく一緒にやっていたんですけど。先輩のサポート期間が終わるにあたって、「ベース/ボーカルで入ってくれ」って誘ったんですよね。そしたらそのバンドをやめてスコットランド・ガールに来てくれて。

Shiori それまでは女の子だけでメロディックのバンドをやっていて。活動していたのは1年間くらいだったんですけど、わたしがスコットランド・ガールに加入した際に解散しました。

● Shioriさんが加わって“スコットランド・ガール”という名前になったわけではなく、男二人で始めた時点からその名前だったんですか?

GORI そうなんですよ(笑)。“スコットランド・ガール”というバンド名になった経緯はちょっとややこしくて。ぼくが前にやっていたバンドで活動していたときに、女の子がボーカルの“スコットランド・ガール”というバンドが滋賀にいたんですよ。で、そのバンドが解散してから時を経て、そのドラムとぼくの二人で今のバンドを始めたんです。だからバンド名を譲り受けた形なんですよね。もともとのスコットランド・ガールの曲は一切やってなかったし、今となってはメンバーも残ってないんですけど。

Shiori バンド名の響きがよかったから使ってるだけ、っていう感じだよね?

GORI そうです。覚えやすいし、いいかなって。もともと女性を入れるつもりはなかったんですけど、“ガール”って付いてた方が面白いかなって。

● で、どうしてShioriさんを誘ったんでしょうか。

GORI Shioriがやっていたバンドのオリジナルの曲がすごく好きだったんですよ。スコットランド・ガールは、男二人で始めたときから「泣けるいいメロディーのメロコアをやろう」っていうことになっていたんで、そこでひと際光っていたShioriのセンスを買って、引き抜かせてもらいました。

● ソングライターが二人いて、ツインボーカルだと、ぶつかることも多いんじゃないですか?

GORI 多々あります(笑)。

Shiori めちゃめちゃあります(笑)。やっぱりそれぞれにこだわる部分があるので、よくぶつかりますね。

● 最終的にはどんなふうに着地するんですか?

GORI 二人の意見の真ん中を選んでやろうとするんですけど、それもなかなか難しくて(笑)。

Shiori 結局はどっちかが折れるときもあるし、3人の意見の真ん中をとって「これがいちばんいいやん」ってなるときもあるし。でも最終的にはみんなが納得したところに着地しているはずです。

● 隣でRyoさんが笑っていますけど(笑)。

Ryo ぼくはいつも二人の間に挟まれている感じなんですけど(笑)。でも、最後はいつもいい感じにまとまっています。仲はいいので大丈夫です(笑)。

● GORIさんは泣ける曲が好きということですが、Shioriさんから見て、GORIさんはソングライターとしてどんな印象がありますか。

Shiori GORIは、わたしが作るような泣きメロ系の曲も作ってくるし、わたしが作れないような、ギターのリフがメインのものとか、リズムを重視したものも作ってくるので新鮮ですね。わたしもそういう曲をやっていて楽しいし。

● 特にアグレッシブな曲はGORIさんが作っていることが多いですよね。

GORI そうやと思います。昔はパンキッシュな曲しか作れなかったんですけど、最近は「この曲、Shioriが作ったんじゃないの?」って言われるようなものもぼくが作っていたりして。

● GORIさんもバラード調の曲を作っていますよね。

GORI Shioriに影響されて自分の感性がちょっとずつ変わっていってるのかなって思います。今回の『As I am』の最後の曲の日本語のバラードは、今まで激しい曲しかやったことがなかったので、ちょっとやってみたかったんですよね。

Shiori わたしもこれまでは激しさに固執していたところがあったんですけど、最近はいい意味でそこに固執しないようになって。メンバーそれぞれ、聴く音楽の幅が広がったこともあって、今回のアルバムは幅を広げることができたかなって思いますね。

● Shioriさんも激しさを求めていたんですね。

GORI 意外と激しくしたがるんですよね。逆にぼくの方が抑えようとしたりして(笑)。

Shiori 昔はGORIの方が激しかったんですけど、いつの間にか逆転してしまって(笑)。最近は、わたしがパンキッシュにしようとすると、GORIが「そんなに激しくしなくていいんじゃない?」とか「2ビートにしないでメロディーを生かした方がいいんじゃない?」みたいに言ってきます(笑)。

GORI ただ速いだけのバンドには思われたくないんですよね。

Interview by 岩崎一敬 (indies issue)
Photo by Jon / teru
Vol.02 へ続く